宗教を覗きに行ったはなし

地元にはライブ会場とかに使われるアリーナがあって、中学のときは広いのでそこで鬼ごっことかして遊んでた。
その日も8人ぐらいで鬼ごっこして遊んでたら奥の会場に変な宗教団体が来たことを友達の一人が嗅ぎ付けた。
それでみんなで見に行こうぜってことになった。
もちろん部外者以外立ち入り禁止で黒服もいて信者は胸にステッカー付けて会場に入ってた。
俺達は会場内を熟知していて2階から入れると知っていたので潜入することができた。
会場は屋内のプロレス会場みたいな作りで広い階段状のスタンド席になっていて真ん中に舞台があった
照明は暗めだから3階のスタンド席から覗いていればこっちが気づかれることはない。
1階のスタンド席に信者がいっぱいた。親子連れが多かった気がする。


真ん中の舞台で信者が野菜のきぐるみ着てなんか叫んでた。いかにもって感じのカルト宗教。
うろ覚えだが自然食を賛美してたような気がする。
10年くらい前なので今ほどカルト宗教は危険視されずに活動できてたのかもしれない。
雰囲気はCMで見るプロポーション作りのダイアナのダイエットコンテストみたいなかんじ
おばさんがハキハキ意気揚々と「わたし楽しいッ!」的なこと叫んでるんだけどなんか異様。
感情を入れるイントネーションが微妙にずれてるからかもしれない。プレコックス感を感じた。


きぐるみ着たおばさんがまともじゃないことを叫んでるので俺たちはその様子見て大笑いして楽しんでた。
最初は馬鹿にしてわらってたんだけど信者達のテンションがあがるにつれ会場全体が狂気の雰囲気にのまれていくのを感じ少し不安になった。
そこで一人が帰るとか言い出してホール裏口からでたとき黒服にみつかった。
黒服っていっても中身はただのさえないおっさん。
「コラッ」!とか言われてしかられるとか思ったら無言でスタスタ近づいてくる、直感で
「あ、これはヤバイ」と感じとっさに逃げた。
漠然とした『つかまったら殺される』っていう心境。
あれが殺気を感じるってやつなのかもしれない。全員感じたみたいで一瞬にして俺達は蜘蛛の子を散らしたように逃げた。
集団心理でみんなで逃げると恐怖が倍増する。それでも追われると楽しいので、すぐに館内から出ず中で逃げ回っていた。
チューボって犬とかに近い存在なのかもしれない。



2組くらいに分かれて逃げ回ってたんだけど黒服はいっちょまえに無線機持っていた。
そのうち追いかけてくる人数が4人5人と増え、俺と友達1人は正面ホール前に追い詰められてしまった。
俺はパニックになりホール内に逃げ込もうとドアをバーンと開けた。
その瞬間女の信者達がキャーと叫び雪崩れ込んできた。奥は人垣でつくった花道になっててみんな一様に手に持った花束をバッサバッサ振っている。
非難されてる様子はなくて歓迎されてるっぽい。俺はなにがなんだかわからなかった。黒服達も状況がのみこめず困惑してた。
俺達はそのすきに逃げることができた。


たぶん正面ホールから教祖が登場する予定になっていて信者は待っていたんじゃないだろうか?
何度も練習していてドアが開いた瞬間教祖を歓迎する手はずになっていたのだと思う
これからも生涯通して女にあんなに熱烈に歓迎されることはないだろうね。いい経験になった。
強大な何かから逃げるって経験は一度は経験しといたほうがいい。肝がすわるよ。