スタンド使いたち






電車のなかでひとりスタンドをくりだす浅黒い男。
「負けてられない」
立ち上がる俺。
男の前に立ちはだかり夢中でシャッターを切る
カシャーンカシャーンカシャーン
周りの乗客の視線なんてまったく気にならない。
浅黒い男も目の前でシャッターを切る俺なんか目に入らずまったく動じていない。
それどころか浅黒い男は俺に撮られることで逆にテンションがどんどん上がっているようにも見えた
シャッターを切るたびに男の手がパタパタと加速度を増していく。
手のスピードにシャッタースピードが追いつかなくなっていく。1/30、1/50、1/80…
たまらず俺はISO感度を800にした。


カシャ


振り向くと小太りの男が俺たち二人を携帯のカメラで撮っていた。
一枚撮っただけで棒立ちの小太り。無表情だ。じっとこっち見、硬直している
何を考えているのか?。不気味だ。


しずかにゆれる東海道線。浅黒い男は聞いている音楽のサビ部分が終わってしまったようだ。
音も立てずゆっくりと手をヒラヒラ宙に舞わせ余韻にひたっている。
乗客達はしばし俺たちの様子に注意を払ったが危険がないことが分かると皆それぞれ静かに視線をはずしていった。
小太りは次の駅で降りてしまった。
誰もが戦いはもう終わったのだと感じていた。
しかしおれはもう一度立ち上がり浅黒い男の目の前でカメラを構えた。
頭の中に無駄無駄無駄と声がこだました。